性同一性障害gidという用語は、日本では多くのところで使われています。法律では、「性同一性障害特例法」、文部科学省が通達した学校への配慮厚生労働省の病名を知るなどほとんどすべてが「性同一性障害」という語句を使っています。

この性同一性障害という医学的診断名は、いままでの性転換症に加えて、1980年の米国の精神疾患の診断・統計マニュアルDSM-ⅢからGender Identity Disorder(性同一性障害)が公式に使い始められました。

医学界がこの名前を付けましたが、それとは別に当事者たちが中心に使ってきた言葉、用語がトランスジェンダー(transgender)です。

アメリカの性別に違和をもつひとや異性装者のコミュニティの指導者であったひとが、1980年代末に、反対の性別で過ごしているけど、性別適合手術(SRS)などの手術は行わないという意味で、transgenderistという用語を提唱しました。

この用語が、1990年代に入り、「トランスジェンダー」として広がっていきました。この用語の意味は、性別適合手術を行う人、異性装、同性愛者、従来の性別概念から外れたひとたちもすべて含む、包括的な用語となりました。

トランスジェンダーの概念の誕生には、性同一性障害はすべてのひとがホルモン治療、外科的手術などによって、可能な限り身体的治療を希望しているという、一般的な理解に対して、従来の枠にはまらずず、いろいろな性別の状態があるし、そのさまざまな状態を望む人もいるということを世間に知らしめることになりました。

従来使われてきた、医学的疾患名の性転換症、性同一性障害という用語に対して、当事者自らが命名したこれらの概念ができたことによって、脱医療化の契機になりました。

これらの結果として、ホルモン治療、手術治療を行わない当事者も、手術をしない、進めない性同一性障害者として、自分を卑下するのではなく、これらの1つのセクシャル・アイデンティティーとして自己を確立することへの一助となったのです。