思春期になると、人間の体は生物学的な性別に合わせて成長していきます。これを二次性徴といいます。女児であれば乳房が膨らんできますし、月経も始まります。男児であれば精通があり、声変りが起きたり、体毛が濃くなったりします。

心の性別が、体の性別に対して違和感を抱いていなければ、こうした変化に対しても、戸惑いはあるもののそれほど強い嫌悪感、拒絶感は抱きません。しかし、心の性別が、体の性別に対して違和感を抱いている性同一性障害にある児童の場合は、こうした変化に強い嫌悪感や拒絶感を抱くことも多くあります。

その気持ちが、学校生活を送る上での支障になることも少なくありません。たとえば学校生活においては、制服を着用することが義務付けられます。しかし性同一性障害の児童にとっては、体の性別だけで着用する制服を決めつけられるのは、非常に苦痛を伴うことです。

更に切迫した問題としては、使用するトイレの問題があります。たとえば心の性別が女性である児童が、男子トイレで、自分の性器をさらしたくないために個室の使用を余儀なくされ、そのことによってからかわれると言う問題が発生することも考えられます。

共同生活を行う学校において、ある程度のルールを決めることは必要なことです。しかし、思春期にある性同一性障害の児童においては、その枠組みを超えた、楽しい学校生活を送るための、柔軟な対応が求められます。