身体を元に戻すことができる部分的な治療
青年が女性化または男性化を促すホルモン治療を始めるにあたっては、親の同意を得ることが望ましい。日本においては、医学的に意思決定が可能となる法定成人年齢は20歳以上であり、その年齢に達すると親の同意は必要はありません。
理想的には、治療に関する決定が本人と家族、そして治療者の間でなされるほうがよいでしょう。青年に対するホルモン治療の計画は、成人期になってからの治療とはかなり異なります。青年期を通して起こる身体的、情動的、精神的な発達を考慮しなければなりません。
身体を元には戻せない治療
性器手術は、次の条件が整うまでは実施されるべきではありません。
-
- 受診者が20歳の成人年齢に達していること
- 受診者は、少なくとも1年間は継続的に希望する性別とその性役割で生活していること
年齢制限 は、最低限の条件として考えるべきで、それ自体が積極的な治療を始めるべき指標を示しているわけではありません。
FTM当事者に対する乳房の手術(胸オペ)は、より早い段階でも実施することが可能ですが、望む性役割で十分な時間を過ごし(実生活)、1年以上の男性ホルモン治療を受けるとなおさら望ましいでしょう。FTXはこれに限りません。
これらの治療をよりよくするために、不可逆的な手術を実施する前に、より男性的な役割を社会的に経験し、それに適応できているかの十分な時間と機会を持つことができるからです。
しかしながら、FTXのようにこれとは違うアプローチが適している場合もあり、当事者の性自認の表現方法に違いがあるために、希望する治療目標によっても変わります。
青年期に入ってからの治療
青年期に医学的治療を保留することは悪いことはあってもよいことはありません。青年期という時期にこそすべき医学的治療の介入を家族を含め、治療者も拒否すると、性別違和はさらに長引き、外見の問題がいじめ・虐待や差別を引き起こす可能性が出てきます。
この時期に受けるいじめ、虐待によって、将来を含めた精神的苦悩の程度とが強く相関してしまいます。(Nuこのようなことから、二次性徴抑制や、それに続く女性化または男性化ホルモン治療を保留することは、青年にとって、治療をしてもしなくてもよいという選択肢はありえません。