皆さんご存知のように、性同一性障害特例法では、戸籍上の性別変更の手術要件に、生殖腺または生殖能力がないことを要件としています。このため、性同一性障害の人は性別を変えるためには、卵巣や精巣の生殖腺を摘出する必要があります。
性別変更のための要件5つのうち、五.)が今回の争われた要件
- 一 二十歳以上であること
- 二 現に婚姻をしていないこと
- 三 現に未成年の子がいないこと
- 四 生殖腺がないこと又は生殖腺の機能を永続的に欠く状態にあること
- 五 その身体について他の性別に係る身体の性器に係る部分に近似する外観を備えていること
性同一性障害gidの人の性別変更の要件に対して、この法律が合憲か違憲かが2016年より争われていました。2019年1月23日、最高裁判所は、「現時点では合憲」と判断しました。申立人の特別抗告を棄却しました。
今回の決定は、裁判官4人の全員一致の意見でしたが、2人の裁判官の補足意見では、「手術を受けるかどうかは本来、自由な意思に委ねられるもので、違憲の疑いが生じている。合憲かどうかは不断の検討が必要だ」と言及しました。
裁判を起こした人は、FTMの岡山県在住の臼井さんです。性別変更に生殖腺切除を強要するのは、憲法13条に違反しているので、戸籍上の性別を女性から男性に変更できるように、岡山家庭裁判所に2016年に申し立てしましたが、請求は退けられ、今回最高裁判所の判断を待ちました。
憲法13条
「すべての国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。」
今回の決定は、性別変更前の生殖機能によって子が生まれれば、親子関係の問題が生じ、社会に混乱が生じることなどを避けるための配慮であると指摘しました。個人の尊重を保障した憲法には違反しないと判断しました。
今まで通り、性同一性障害gidの性別変更の要件は、生殖腺がない、または生殖機能がない状態でなければならないとし、憲法もこの程度では違憲でないということなのでしょう。
現在、北欧の一部では、厳格に行われていると思いますが、診断のみで性別変更もできる国もあります。
もしかすると、もっと理解が広がれば、このような結果がきっかけで、数年後には法律の要件が変わることもあるかもしれません。