性同一性障害性GID・性別違和に対する治療的アプローチ
性同一性障害GID・性別違和を緩和するにあたって、20世紀後半に、性役割を変更することに加えて、ホルモン治療や手術によって、二次性徴を変えてゆく方法で医療サイドが治療を含む支援を提供するようになりました。
性同一性障害GID・性別違和の認知が広まりました。ハリー・ベンジャンミンは、性の不一致にスペクトラムがあることをすでに認識していたが、初期の臨床的アプローチは、性別適合手術(SRS: sex reassignment)を受ける、男性から女性であるMTFの女性化、あるいは女性から男性であるFTMの男性化をできるだけ完全に進めていくことに重きが置かれていきました。
この方法は広く認識され、きわめて効果的であることが証明されました。ある研究によれば、その満足度は MTFで 87%、FTM で 97%に達して、SRS手術をしたことを後悔することは極めて稀であると報告しています。
SRS手術したことによる後悔は、MTF受診者で 1~1.5%、FTMで1%以下とされています。このような結果から、多くの性同一性障害GID・性別違和を緩和する上で、ホルモン治療や手術が医学的に必要であることは明らかだと言えるでしょう。
性同一性障害GID・性別違和への対応は、より多様化している
この分野が成熟してくるにつれて、医療サイドは、性同一性障害GID・性別違和を緩和するために多くの性同一性障害GIDの当事者がホルモン治療と手術の両方を必要とします。一方で、これらの1つだけを必要とする人もいれば、どちらも必要としない者もいることを認識するようになりました。
医学的アプローチによっては、精神療法によって、性同一性障害、トランスジェンダーやクロスジェンダーの性自認がが出生時に割り当てられた性役割に統一され、身体を女性化あるいは男性化する必要を感じないという人たちもいます。
性同一性障害GID・性別違和を緩和するのに、性役割や性の表現を変えるだけで十分だという人たちもいます。また人によっては、ホルモン治療のみが必要で、できるなら性の役割の変化を必要とはするものの、手術は必要ないというGID当事者もいます。あるいは、手術によって性の役割の変化を必要とするが、ホルモン治療は必要はないという人たちもいます。現在、性同一性障害GID・性別違和への対応は、より個別化されるようになってきています。