FtMの手術
- 乳房に関して/胸部手術:乳房切除術、乳腺摘出術、他の名称は、胸オペと言われます。
- 性器手術:子宮摘出術/卵巣摘出術、近位尿道再建術(これは次の2つの術式と組 み合わせることも可能)、外陰形成術あるいは陰茎形成術、膣切除術、陰嚢形成術、陰茎インプラントや人工睾丸(シリコンプロテ ーゼ)の挿入
- その他(非性器、非乳房)の外科的手術:声の手術(FTMはまれ;通常男性ホルモンで声変りをします)、脂肪吸引、脂肪注入、 大胸筋部インプラント、その他の様々な美容外科的手技 、一般的には、女性が行うような美容整形手術はほとんど行われません。
胸オペ、性別適合手術は、再建手術なのか、美容整形手術なのか?
性別適合手術(SRS)、胸オペが「美容整形」手術なのか「再建」手術なのかという疑問は、哲学的な観点からだけでなく、治療費の負担の観点からいうと疑問が生じるかもしれません。
この点は、性同一性障害(GID)という診断の元であれば、美容整形とは考えにくくなります。一方、乳房がかなり大きく(いわゆる巨乳)、精神的苦痛を受けているひともいる場合もありますが、この場合は、病気、あるいは、何かしらの診断名がつかないので、どうしても、現行制度では美容整形の範疇になるのかもしれません。
美容整形手術、またはコスメティック手術と称される手術は、通常、医学的な必要性がないものと考えられており、それゆえに国民健康保険の適応がなく、費用の全額を受診者が支払います。
これに対して、再建手術は医学的 に必要なものだと考えられて、その治療の効果には疑問の余地がなりません。
そのため、費用の一部あるいは全額が国の健康保険制度や手術費用の一部が民間保険会社の医療保険で支払われています。
形成・再建外科分野は、一般的なものでも、ジェンダー関連の手術でも、 純粋に再建的なものと純粋な美容整形的なものの明らかな区別はないと言っていいでしょう。
ほとんどの形成外科手術は、実際のところ、再建的な要素と美容整形的な要素の両方が混じりあっているのが実情です。
そのため、性器手術と乳房切除術(胸オペ)が純粋な美容整形目的とは言えないという点については、ほとんどの専門家が賛同するところだと思いますが、他の外科的手技については、どこまでが(例えば、豊胸手術、顔面女性化手術など)純粋な再建の目的と言えるかについては、意見の分かれるところでしょう。
FTMの陰茎形成術やMTFの造膣術が、GID当事者のそれまで背負ってきた長い苦しみに終止符を打つ ものであると理解できるほど簡単ではないかもしれません。
GID当事者によっては鼻尖縮小術のような美容整形手術が、その人たちの生活の質(QOL)に劇的、そして、永続的な影響を与えることがあり、ゆえに性別違和のない他のGID当事者がこのような手術を受けることと比較すると、 これらの手術は、医学的な手術の必要性があると言えるでしょう。