FTMの胸オペとは?

FTMの男性化の治療は、ホルモン治療をすることにより顔、声はかなり男性化します。ただ、どうしても、男性ホルモンだけでは、男性化しない場所があります。それは、乳房です。

男性ホルモンにより乳房内の乳腺は若干小さくなった感じになるかもしれませんが、根本的なふくらみはどうしてもなくなりません。そのため、乳房内の乳腺を摘出しないといけません。

乳腺を摘出する手術を一般的には、乳房切除、乳腺摘出といい、FTM当事者の間では、胸オペと呼ぶことが多いようです。

FTMは、性自認が男性なので、乳房のふくらみは、性の自認と肉体とが1番一致しない場所です。そのため、多くの人が、自分の乳房の大きさがどの程度か知りたくないし、自分の乳房が下垂があるのかないのかも考えたくもないことでしょう。

胸オペの手術方法

胸オペの手術方法に関して、大雑把に言うと、下垂していなくて胸のボリュームが中ぐらいの人までは、乳輪辺縁の下半周を切開して乳腺を摘出することができます。現在、下垂(たるみ)をすでに生じている場合は、乳腺だけ取り出しても皮膚にたるみが残ってしまうので、別の手術方法を考えないといけないでしょう。

胸の構造

まずは、次のことを理解するとわかりやすいかもしれません。

◎乳房は、脂肪だけの塊ではない。
乳房の中身は、脂肪だけでできていると思っているひとがたまにいます。ボリュームが小さいひとは、どちらかというと乳腺が占める割合が高いです。
胸オペーFTM
青く囲った部位が乳腺です。ここを取り出します。

ボリュームが大きいひとは、脂肪の割合が多いですが、脂肪吸引しただけでは平らにはなりません。いずれにせよ、胸を平らにするには、脂肪吸引だけでは無理で、胸オペして乳腺組織を取り除かなければなりません。

胸オペのポイント

・脂肪吸引では不可能
・乳腺を摘出しなければならない=胸オペでなければ無理

◎皮膚の伸縮には、限界がある。
皮膚は、伸びたり縮んだりする能力があります。 わかりやすい例では、妊婦さんです。 胎児が成長していくと、お腹が大きくなります。それに伴って皮膚が伸びていきます。

子どもが生まれると一時的に伸びていた皮膚はある程度もとに戻ります。皮膚はある程度伸びても、縮む能力も兼ね備えているのです。その場合、皮膚割れの線を生じますが。ただし、何回もお産を繰り返すと伸びた皮膚が戻らなくなってきます。

乳房が大きくても、下垂していない(たるみがない)人がいます。 これは、他の要素もありますが、皮膚に弾力性(張り)があるために、胸のボリュームがあっても支えることができるからです。ただし、それでも、年齢を重ねると重いボリュームに支えられなくなり、下垂、たるみを生じていきます。

下のイラストは、胸の下垂度を示したものです。
胸オペ時に役立つ、胸の下垂による分類
横から胸を見た状態で、赤い点線より上に胸があれば、ボリュームの有無は問いません。

この場合ほぼたるみがなく手術ができます。軽度の下垂もなんとかなる場合が多いです。問題は、胸の下垂が中等度から重度の場合です。

この場合は、手術を1回で行うのであれば、長い傷になってしまいます。そして、2回で行う場合は、乳輪の周りの傷となりますが、乳輪の周りに放射状にしわができてしまいます。

自分の胸を確認してみましょう

イメージ:皮膚に張りがある胸、パツンパツンしているという表現もあるでしょう。

胸オペに関して考えてみると、張りがある弾力性のある胸は皮膚が縮むことができる(伸縮性がある)ので、下垂していなければ大きくても著しいたるみは生じません。

一方、下垂している胸というのは、すでに皮膚の伸縮性が乏しいと言えます。

乳房の中身のボリューム、乳腺を取りだすと、乳房の皮膚が縮むことはできないためにたるみを生じてしまいます。

下垂している乳房=皮膚が縮む能力がほとんどない。張り(弾力性)がない。 皮膚をつまむと弾力性がわかります。

胸の皮膚をつまんで、ほとんど皮膚が伸びないようであれば、皮膚の弾力性があると言えます。

一方、つまんで、伸びるようであれば張りがなく弾力性がないはずで、縮む能力がほとんどないと言えるでしょう。

この場合は、胸オペにおいて、乳腺だけ摘出した場合には、皮膚にどうしてもたるみを生じてしまいます。

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